EPS創薬株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:大社聡)の山本哲郎リサーチセンター長は、神奈川歯科大学槻木恵一教授、帝京大学山口英世名誉教授らと共に、日本においてCOVID-19の発症率が低いことに分泌多型免疫グロブリンAが関連していることが示唆される研究結果を報告しました。 【本研究のポイント】 ・ 2020年11月時点で、日本では諸外国と比べワクチンの接種率が低いにも関わらずCOVID-19の発症率が極めて低いことに着目 ・ 免疫グロブリンのうち、特に粘膜から分泌される分泌型免疫グロブリンA(sIgA)反応によりSARS-CoV-2への感染が阻害されていると仮説を立てた ・ SARS-CoV-2に感染していない健康な日本人180人を対象に唾液中のSARS-CoV-2反応性IgA抗体を測定した結果、95人(52.78%)が陽性と判定され、日本におけるCOVID-19の発症率の低さにIgA抗体が関連していることが示唆された 【研究成果の概要】 2020年11月時点でSARS-CoV-2の感染者数は5600万人以上、平均人口感染率は0.721%にのぼりG7諸国でも0.6~2.8%の感染率と推定される中、日本は0.081%ときわめて低い感染率であると推定され、当時ワクチンの接種が進んでいないにも関わらず最もSARS-CoV-2によるパンデミックの影響を受けていない国とされていました。 本研究では日本人は諸外国に比べてSARS-CoV-2に対する感受性が低く、その原因は粘膜から分泌されるsIgA抗体がウイルスを中和、あるいはウイルスの上皮細胞への付着を阻害していると仮説を導き、仮説を立証するため健康な日本人を対象にSIgA抗体の濃度を測定しました。 被験者は3歳から75歳の日本人で、COVID-19の診断、PCR検査によるSARS-CoV-2が陽性ではないこと、COVID-19に関連する症状と既往が無いこと、SARS-CoV-2ワクチンを接種していない健常人180人を対象として、唾液中のSARS-CoV-2反応性IgA抗体を測定しました。この結果、全体の52.78%である95人が陽性と判定され、陽性率は年齢に対し負の傾向を示すものの、幅広い年齢層でIgA抗体が確認されました。 本研究結果では、IgA抗体によるSARS-CoV-2への防御効果の程度は判断できないものの、日本人が自然に有するsIgA抗体の陽性率の高さとCOVID-19の発症率の関連を示唆する前例のない疫学データであるといえます。 【論文発表の概要】 本研究成果は、2022年8月発行の「Microbiology and Immunology」誌に掲載されています。