【概要】
① 自身で服用可能な簡便性
現在のインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスに対するワクチンの接種方法は、皮下や筋肉内への注射ですが、舌下ワクチンは、錠剤などを自身で舌下に投与するので、注射器や針などの専用の機器や医師等も不要となります。
そのため、舌下ワクチンは、医療環境が整っていない地域でも広く利用されることが期待されます。
② 感染予防から重症化抑制まで幅広い有効性
免疫に係る抗体は様々ありますが、働く部位が異なっており、IgGと呼ばれる抗体は血液中で、分泌型IgAと呼ばれる抗体は粘膜上です。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどのウイルスは、血液に直接感染するわけではなく、上気道の粘膜へ感染するため、IgGの産生を増やすことを目的としている現在のワクチンでは、重症化は防げても、感染自体を防ぐ効果に期待できません。それらウイルスの感染自体を防ぐには、舌下投与によって分泌型IgAを産生させる必要がありますが、様々な課題があり、実現していませんでした。
しかし、リサーチセンターでは、サルを用いた研究において、ワクチンの舌下投与で分泌型IgAを産生させる方法を開発しました。
さらに、その方法によって、併せて血中のIgGも産生されることを確認しました。
したがって、舌下ワクチンは、現在のワクチン同様に感染後の重症化を防ぎつつ、感染自体も防ぐ効果に期待できます。
③ 高い安全性
現在のワクチンは接種後に、接種部位の腫れや痛み、発熱など様々な副作用がありますが、サルを用いた研究では、舌下ワクチンでそれらの副作用は確認されませんでした。
舌下ワクチンは、現在のワクチンよりも安全に使用できるワクチンとなることが期待されます。
【論文】
上記、舌下ワクチンの有用性を検証したリサーチセンターの研究は、オックスフォード大学が発行する雑誌、「Biology Methods&Protocols」に掲載されました。
論文名:SARS-CoV-2 sublingual vaccine with RBD antigen and poly(I:C) adjuvant: Preclinical study in cynomolgus macaques
URL:https://academic.oup.com/biomethods/article/8/1/bpad017/7266774